【独自取材】日立システムズeスポーツ部インタビュー前編「社長直々の相談から、社内eスポーツ部誕生へ」
大手企業がクラブ活動の一環として「eスポーツ部」を新設する動きが広がっている。最初に口火を切ったのは、従業員数約1万人の大手ITサービス企業「株式会社日立システムズ」(本社:東京都品川区、社長:北野昌宏)である。
10月1日、同社は文化体育クラブの1つとしてeスポーツ部を設立。主な活動競技に人気サッカーゲーム『ウイニングイレブン2019』を採用し、来年行われる茨城国体の関連プログラムである「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」(2019年10月に茨城県で開催予定)への出場を目指すとしている。
VAMOLAは、同社eスポーツ部部長の杉山治さんと副部長の金子麻紀さんにお話を伺った。
――御社にeスポーツ部が生まれた経緯を教えてください
杉山さん:背景としては大きく3つあります。まず、世の中の「eスポーツ人気の高まり」です。世界の競技人口が1億人以上いるといわれていること、今夏のアジア大会で公開競技に採用された取り組み、また来年の茨城国体に関連して大会が開かれるといった社会環境は見過ごせません。
そして2つ目として、「働き方改革」です。当社が企業活力向上施策として、「働き方改革」、「健康経営」、そして「ダイバーシティ」の3つのテーマを統合的に進めています。その中でeスポーツを通じて、世代や組織を超えた交流の活性化に役立てればと考えています。
最後に、3つ目が最も大きな理由になります。それは当部発足の発起人である「部員のKさん」の強い熱意です。「部員のKさん」とあえて名前を伏せさせていただきましたが、実を言うと…当社社長の北野です(笑)。
――社長がeスポーツ部の発起人なのですか?
杉山さん:当社では福利厚生の一環として、全社で18の文化体育クラブが活動しています。実は私はサッカー部の部長を務めていまして、北野社長がイントラネット上にあるサッカー部のホームページを見て私のことを「広報の杉山か」と確認されたようで、社長室に呼ばれました。
てっきり取材の話かなと思っていたら、突然、「ウイイレをやったことがあるかね?」、「ウイイレが上手な社員を誰か知らないかな?」と言われまして。確かに私はサッカー部の部長ですが、ウイイレが強い社員のことは知りません。
悩んでいると、茨城国体の話題にもなり、「1万人もの従業員がいるんだから、一人くらいは上手な社員がいるんじゃないか。国体に選手を出そうよ。ITサービス企業なんだから、eスポーツをやらないわけにはいかないでしょう」と。どこまで本気なのか分からない状態で突然言われたのです(苦笑)。
――社長直々の相談から始まったのですね
杉山さん:実際のサッカープレイヤーなら、社内にある程度のネットワークもあるので分かりますが、ウイイレのプレイヤーをすぐに見つけるのは難しいと思いました。
そこで、まず社内大会を企画することで、上手そうな社員を自薦他薦でピックアップする機会を作り、その中から茨城国体の予選に出場できそうな「ウイイレが上手い社員」を揃えるスキームが良いのではと考えました。それならば、公式な社内の文化体育クラブに登録し、部活動の一環として社内大会を開催した方が有望な人財の発掘には効果的だろうという判断になったのです。
――社長はゲーム好きなのですか?
金子さん:元々ゲームがお好きなようです。特にレーシングゲームがお好きだと聞いています。ウイイレも、元々モバイル版をプレイされていたようで、eスポーツ部の発足にあたり、PS4とソフトも購入されたようです。
――社長がeスポーツ部のアイディアを思いついた背景を推察すると?
杉山さん:私が社長室に呼ばれる少し前、社長が外部の有識者を招いたダイバーシティカンファレンスという社内会議に出席していました。登壇した講師から「会社を変えようと思ったら、社長や役員が率先して、企業文化を変えるための行動が必要だ。例えば、役員が若手社員から学ぶ、逆メンターの取り組みとして、趣味のサークル活動を従業員と一緒に行うことは効果的である」とアドバイスされました。
その時も社長は、「私はウイレレをやってみたい。私にはスキルが無いが、若い方に教わるような部活動があるといい」との発言があったと聞いています。
――先進的な発想ですね
杉山さん:事業環境的にもITサービス業界は変革期でして、いま新しいことを行っていかなければならないシチュエーションにあります。「チャレンジするマインド」を従業員に持って欲しいという想いもあると思います。そうした流れを受け、せっかくなら会社全体を巻き込むような取り組みにして、中からも外からも刺激を与えられたらとeスポーツ部設立に至ったということですね。
次回、後編は日立システムズeスポーツ部の日々の具体的な活動内容と、部員のウイイレのレベル、そして茨城国体予選に向けた準備と展望ついてお伝えする。
(インタビュー・文●VAMOLA eFootball News)