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FCバルセロナも参戦するeスポーツリーグ「LPE」は11月からプレシーズンマッチが開始 代表チャビ氏「女子選手枠も検討している」

 FCバルセロナやアヤックスなど、プロスポーツクラブのみが参加するeスポーツリーグ「LPE」を設立した、スペインProfessional Esports League社(以下、PEL社)のCEOチャビ・コルテス・トゥビオ氏が来日し、9月17日渋谷のトークイベントに登壇した。同イベントは、日本財団が主催する「Social Innovation Week SHIBUYA 2018」内のトークセッションで、「eスポーツの本質」というテーマで開催された。チャビ氏は、eスポーツが置かれている社会環境や市場の事実情報を積み上げ、eスポーツ及び「LPE」リーグが持つ将来性を語った。登壇終了後のVAMOLA独自のインタビューを含め、以下、詳細をお伝えする。なお、「LPE」は先月22日に、日本のモバイルゲーム企業であるアカツキ社がPEL社の株式を取得し、子会社化されている。同イベントには、アカツキ社のeスポーツ事業責任者である熊谷祐二氏も同席した。


チャビ・コルテス・トゥビオ氏
スペイン・バルセロナ出身。League of Professional Esports(LPE)設立者。ゲーム業界で20年に渡り、アナリスト、ジャーナリストとして活動。世界的なスポーツチームのeスポーツ事業コンサルティングやeスポーツ大会運営に従事する。

eスポーツのマーケティングツールとしての魅力とは

 「1億6700万人」、現在のeスポーツの年間視聴者の人数です。これは、米メジャーリーグ(MLB)の視聴者数1億1400万人を既に超えています。eスポーツの視聴者数は年15%から20%の急成長を遂げており、控えめな指標を見積もっても2022年には2億7600万人に上ると言われています。この指標は、NHL、NBA、NFL等の主要スポーツリーグの視聴者を超える規模に匹敵します。現在、主要スポーツリーグの課題として、その視聴者平均年齢が40代から50代に突入しており、この10年で高齢化が加速しています。一方、eスポーツは10代から30代の「若年層」にリーチしており、また視聴者のエリア別割合として、約半数が「アジア圏」である特徴があります。若年層及びアジアへのマーケティングとして、安定して有効的と予測されるeスポーツは、グローバル企業にとって非常に魅力的なツールになることでしょう。マーケティングの方法論としても、eスポーツはオンライン放送を中心に作り込まれることになります。例えば、世界的ストリーマーである「Ninja」が、番組配信中にスポンサー企業であるフードデリバリーサービスを使用し売上に非常に効果を発揮したケースなど、単純な広告枠に留まらない、よりエンゲージメントの高いスポンサーのアクティベーション事例が生まれてくるでしょう。


(写真:登壇するチャビ氏。会場は渋谷EDGEofで行われた)

普段eスポーツを見ない人たちにも、eスポーツの魅力を届ける「LPE」リーグ

 LPEは、実際のプロスポーツクラブが「複数ゲームで」参加する唯一の「通年リーグ」です。年間を通じて、ゲームファンにもスポーツファンにも、両者にリーチできる「グローバルeスポーツリーグ」を目指しています。重要なことは、サッカークラブだからと言ってサッカーゲームだけ、野球チームだからと言って野球ゲームだけに限定するのではなく、人気のある複数ゲームタイトルを運用し、ゲームファンから「純粋に見たい」と要請されるタイトルで、世界的ビッグクラブ同士がeスポーツで対戦するところに魅力があると考えています。これによって、「普段eスポーツを見ない人たちにも、(リアルスポーツクラブという入り口から)eスポーツの魅力を届ける」ことができると考えます。現在、FCバルセロナ(スペイン)や、アヤックス(オランダ)、サントスFC(ブラジル)、また、東京ヴェルディなどのサッカークラブが参加予定ですが、プロであれば、サッカー以外の野球、バスケットボール、アメリカンフットボールなど様々なスポーツクラブを歓迎しています。実際に北米、南米、アジア、ヨーロッパ、アフリカと世界各地のチームと議論を重ねており、変わったところではインドのクリケットチームから問い合わせも頂きました。2018年11月からプレシーズンマッチを行い、2019年から1stシーズンを開幕する計画で準備を進めています。

eスポーツも、スポーツの価値観を体現するものである

 技術、集中力、チームワーク、そして日々のトレーニングが必要という点でeスポーツはスポーツであると考えます。LPEでは、特に「平等性、透明性、包括性、情熱、非暴力、エピック、競争性、尊敬」という8つのバリューを重要と捉えており、eスポーツが社会に新しい文化として根付くためのプラットフォームを提供します。例えば、1つのチームで男女が同時に対戦することができたり、性別や身体的コンディションの差異に関わらず、どんな人でも平等にチャレンジできるリーグを目指したいと思います。

日本のeスポーツ発展のために必要なこと

 日本のeスポーツの普及のためには、トーナメントやリーグ戦をもっと活発的にいろんな形で開催していくことが特に必要です。


(写真:熊谷氏はアカツキ社のeスポーツ事業責任者であると同時に、LPEを運営するPEL社の役員でもある)

選手としてもファンとしても、女性の参加を増やしていく施策は

 まず優秀な女性選手、女性ゲーマーの発掘が大事だと思います。同時に、トップチームのプロ選手だけではなく、例えばユース制度のようなアカデミーのところで、男女比が男性に傾き過ぎるのではなく、女性選手にも力を入れて、より平等性に近づける努力も重要です。ただ、ゲームのコミュニティが、余りに男性向けになり過ぎてしまうと、現実には女性の参加が難しいところがあります。そこを調整していく方法は、今後、もっと考えていかないといけません。しかし、トッププロレベルで活躍する女性のeスポーツ選手が生まれれば、その存在が例えば(競技性があるものを上達するための)教育の方面に向かったり、市場全体の中で他の分野にも良い影響を与えることになるでしょう。LPEとしては各クラブに対して、参加枠の中で「女子選手枠」を設けるようにアプローチして、男女の選手がリーグに両立できることを検討しています。

 以下、熊谷氏の補足。
 LPEのコミュニティには女性プロゲーマー(※)もいて、そうした女性の意見を積極的に取り入れることで、女性プレイヤーに対して少しでもサポートしてあげられるように、リーグ運営を行っていく考えです。また、男女の観点もそうですが、同時に年齢の若いアンダー世代をサポートするユースの制度のような「育成の仕組み」がeスポーツの中でも非常に大事だと考えます。


(写真:※左・同行していたエリザベス・Rさんは、FCバルセロナのeスポーツ事業に関わっており、プロの女性eスポーツ選手としても活躍)

 以下、登壇終了後、VAMOLA eFootball Newsのインタビューに応じた。

ヨーロッパのクラブチームが日本人選手を所属させることは可能か

 日本のゲームに対する文化や才能が極めて高いことは知られています。eスポーツ選手として、他の主要スポーツの選手に比べても、高いレベルでクラブに貢献ができると思います。是非、強いタレント力のある選手が欧州のチームへの移籍にチャレンジして欲しいです。良い選手であれば可能であると断言できます。例えば、隣にいるエリザベスさんは、FCバルセロナのeスポーツチームのアドバイザーをしています。日本人で良いeスポーツ選手がいれば、彼女がFCバルセロナに紹介することができますし、実際それもあって、今回彼女は日本に来ています。

(取材●VAMOLA eFootball News編集部)

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