【再編版】VAMOLA編集長ちゃまくんインタビュー「君もサカゲーでご飯を食べてみないか」(前編)

2018年7月20日、日本初となるeスポーツのサッカー専門メディア『VAMOLA eFootball News(以下、VAMOLA)』が創刊した。編集長に就任したのは、元よしもと芸人の「ちゃまくん」。

ちゃまくんは、eフットボール黎明期より「サッカーゲームを仕事にしてみないか」と、ゲーム動画の配信を通じて視聴者にメッセージを投げかけ続けてきた。現在、Youtubeチャンネルの登録者数は、86,692 人(2019年1月15日現在)とサッカーゲーム実況で日本一の数を誇る。

VAMOLAは創刊してまもなく半年が経過する。公開した記事は200本以上となった。そこで創刊当初2018年7月に行った、ちゃまくんへのインタビューを再編集し、改めて前後編の記事とした。前編は、VAMOLA編集長就任にあたり、今まで行ってきた活動経緯を聞いた。


(写真撮影協力:Time Out Cafe 恵比寿)

■お笑いの動画を撮るはずが、ウイイレ動画に

ちゃまくん:18歳でよしもとの養成所に入って1年通ってデビューして、そこから10年間お笑い芸人をやりました。メインは渋谷のシアターDという劇場と、∞(無限大)ホール。2013年、よしもとからYoutubeでなにかやりたいという話が出て、その時はコンビを解消していて何もしていなかったんです。

なかなかLIVEにも出られていない状況のときから、Ustreamでネット配信をしていたり、またミュージシャンのまつきあゆむさん(※1)が、自分で(音源を)全部ネットで売っちゃって、お金が直接自分に入ってくるようなことをしていて、とても影響を受けていました。

そういうアンテナを持っていたから、会社から詳しいと思われていて「お前、なにかやれ」と。動画も最初はお笑いで、週1で作家がついて、カメラマンもついて、配信する人もいて、しっかり撮ることになったんですが、視聴者を離さないためには仮にクオリティが低くなっても、毎日投稿しないとダメだなと気付きました。だけど、Youtubeでどういう動画が良いというのが当時は全然定まってなくて、それこそHIKAKINさんがちょっと有名くらいの時期で。

そこで、会社から週1はみんなで考えたものを撮って、それ以外は「家で毎日何か上げられるものをやってくれ」と言われ、そのときにウイイレが好きで自宅でよくやっていたので、それをとりあえずアップしたのが最初なんです。なので、当初はサッカーゲーム実況ありきでは全く無かったんですよね。

※1 まつきあゆむ
日本のシンガーソングライター。既存のレコード会社やこれまでの音楽流通を一切通さずにweb上のみで本人が直接販売。楽曲の著作権も本人が管理している。

■たった15分の試合動画に5~6時間のゲームプレイでネタ探し

ちゃまくん:2013年当初は、1日に多くて10人。再生数が二桁もいったら嬉しいくらいでした。そもそも、よしもとが会社として取り組んでいたものではなく、ある社員さんが「とりあえずやってみよう」という企画だったので、撮影、編集、告知なども最初から全部ひとりでやっていました。

編集ソフトはファイナルカットプロを使っています。オープニングとエンディングの型ができているので、毎日同じ動画を撮ってはデータの頭と後ろだけ切って、そこにハマるようにしています。

撮影時間そのものは1試合分の15分なんです。その後、30分で編集して、合計1時間で1本の動画を作っています。そういう意味では効率よく作れるようなりましたが、動画1本を撮るのに、実は1日に5~6時間もゲームをプレイしてネタを探しています。今、ウイイレの実況動画を本格的にアップし始めて約5年になるので、ロシアW杯で2回目のW杯になったところです。

■就職して腕が落ちるプレイヤーを見ることが寂しい

ちゃまくん:「君もサカゲーでご飯を食べてみないか」と言い始めたのは、就職して腕の落ちてしまった元プレイヤーをたくさん見てきたからと言うのがあります。サッカーゲームが上手いプレイヤー自体は多くいるのですが、生活をしていくためにはやっぱりお金が必要で、みな就職する必要がありますよね。

ただ、就職しちゃうと、「プレイのための時間」がなかなか取れなくて、結果的に実力が落ちてしまったり、それで面白さが半減してスッパリ辞めちゃう人なんかもいて、その状況を(Youtube配信を始めて)もう5年も見てくると、本当に寂しく、またもったいないなと感じていました。

■サッカーゲームに集中できる環境を作ってあげたい

ちゃまくん:現在、サッカーゲームのトップクラスで活躍する人に、振れる「仕事」は紹介したりしています。僕が一番、ゲーム配信では(インターネット上で)目立っているところもあるので、例えばイベントやテレビの制作会社の人が「番組でサッカーゲームの企画がしたい」、「芸能人とトッププロのこうした対決が撮りたい」といった相談の声がかかることが多いんです。

その時に、ちゃんと出演料がもらえるように話をした上で、選手を紹介しています。ただ、今はまだ地上波はなくて、フジテレビNEXTなどのCSやネットTVが中心です。担当者と話をしていると、今後は地上波を含めてもっと露出していく可能性を感じています(※2)。

また、まだ多くはいませんが、YoutubeにサッカーゲームのLIVE配信チャンネルを立ち上げて登録者を増やすことで、広告収入を(月に)10万でも15万でも、そのベースを作ることを目指すサポートをしています。僕のLIVE配信のゲストに出てもらったりして相互リンクのような形を作ってあげたり、またそのプレイヤーの「凄さ」を視聴者に伝える努力をしています。

例えば、アイトラッカーという「プレイヤーがゲーム画面のどこを見ているのかが分かる」機械があるのですが、それを世界大会に出ている選手につけてもらって、自分との差を見せることで、「世界レベルの選手の視点はこれくらい凄い!」と視聴者に伝えたりしています。

とにかく、「サッカーゲームに集中できる環境を作っていきませんか」と言う話を周囲のプレイヤーたちにしていて、日々思いついたことを一緒に実践しています。

※2 eスポーツをテーマとした地上波番組
2018年夏以降、日本テレビ『eGG』、フジテレビ『いいすぽ!』、テレビ東京『有吉ぃぃeeeee!』が地上波レギュラー番組として続々と放送を開始している。

■ゲーム性のウイイレ、ライセンスのFIFA

ちゃまくん:FIFAとウイイレ、自分の中では半々のボリュームで(発信していきたいと)考えています。ただ、僕のYoutubeチャンネルでは、元々ずっとウイイレをやってきたので、PVはウイイレの方が断然多くて、10倍は違うというのが実情です。

FIFAが凄いのは、もちろんリーグやチーム、選手とのライセンスですが、eスポーツとしてのリアルイベントや、僕みたいなストリーマーのネット配信など、ゲームの「二次利用」を含めて、クラブにライセンス料を払っていると聞いていて、全体の奥まで丁寧に設計されているところが凄いと思います。

確かに、大会の規模や市場はFIFAの方が上なので(※3)、「一攫千金」や「ドリーム」の部分でもFIFAは魅力的です。ただ、ゲーム性はウイイレだと思うし、何よりKONAMI社は日本の会社です。これからプレイヤーになりたいと考えている若い人に向けては、まずは体験版を実際にやってみて、自分がどっちを面白いと感じるのかが大事なことだと伝えたいです。

昔、メッシが言っていたのですが、凄いシュートを決めた試合後のインタビューで「なぜ、あんなシュートができるのですか?」と質問されて、「(TV)ゲームで決めたことがある」と答えたんですね。

それがとても印象的で、こんなエピソードもサッカーゲームを始めるキッカケになると思うし、とにかくキッカケはいっぱいあってよくて、サッカーゲームをする若い人がもっと増えていって欲しいですね。

※3 FIFA eWorld Cup 2018
FIFA(国際サッカー連盟)が主催するeスポーツ大会。2018年8月にロンドンで行われた。日本からは唯一「ナスリ選手(大会登録名はWEB)」が出場。大会優勝賞金は25万USドル(約2,800万円)。同大会の出場権を目指し、年間を通じて世界各地で公式予選大会が開催されている。

VAMOLA編集長ちゃまくんインタビュー「君もサカゲーでご飯を食べてみないか」(後編)に続く。次回は業界の課題とeフットボールの未来について。

(インタビュー・文:VAMOLA eFootball News編集部)

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